おさなごころを科学する 森口佑介 【まとめや感想】
第一部 無能な乳幼児
第一章 無能な乳幼児
遺伝と環境 / デカルトの生得観念 / 白紙としての乳幼児 / 植物としての乳幼児 / 進化論と発達心理学 / ダーウィンの乳幼児観 / 遺伝も環境も大事 / わが国における乳幼児観
デカルト 生得的に神の概念を持つ。しかし、伏在的に。(↔顕在的)
ロック 生まれたときは白紙で無能な存在
ルソー 可能性を秘めた植物。教育で環境づくりする必要がある。
進化論は、遺伝的要因の重要性と、動物と人間の連続性、という視点を提供した。
フロイト、ピアジェ、ボールドウィンなど心理学にも強い影響を与えた。
進化論から発達心理学への影響としてはヘッケルが典型的。
”個体発生は系統発生を繰り返す”
輻輳説 シュテルン 遺伝的寄与率 ⇢ 行動遺伝学で検討
相互作用説 発達心理学、生物学で検討
柳田國男 「七歳までは神のうち」
荻生徂徠 「七歳以下は智も力もなき」
第二章 活動的な乳幼児
科学的に観察する / ピアジェ以前の発達心理学 / 偉大な心理学者ボールドウィン / ピアジェの乳幼児観 / ピアジェ理論の肝 / 段階発達 / 対象の永続性 / A ノット B エラーの議論 / 自己中心性 / アニミズム。実念論、人工論 / 批判されるピアジェ
無能な幼児観 ゲゼルの成熟説とワトソンの学習説
ボールドウィンはピアジェに大きな影響を与えたが、黙殺されている。
循環反応
段階発達
同化と調節
発達を遺伝と環境の相互作用と捉える視点。
こどもは、科学者かつ活動的な学習者である。
ピアジェ理論の核 「適応」と「体制化」
適応とは、自分の認識の枠組み = シェム に対し、
外界の対象、新しい情報を、既存の枠に取り込む「同化」と、
シェム自体を新しい経験に合わせて変化させる「調節」を繰り返すこと。
体制化とは、独立したシェムが相互に結びつき、ひとつの全体としてまとまった機能をもつこと。
適応は外的環境との関係、体制化は内的側面、をあつかっている。
適応と体制化は、発達のどの時期でも不変で、連続的発達変化を生み出す。
一方で、ピアジェは、ヒトの論理的思考は、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期という、不連続な段階発達をする、と唱えている。
操作とは、手を動かさなくても、情報を区分したり結合、変形、を論理的に行う過程のこと。心的な操作。
感覚運動期の6分類
- 反射の行使
- 最初の獲得性適応と第一次循環反応
- 第二次循環反応および興味ある光景を持続させる手法
- 第二次シェムの協応と新しい状況への適応
- 第三次循環反応と能動的実験による新しい手段の発見
- 心的結合による新しい手段の発明
第二段階では、反射行動から発見した新たな行動を、興味を持って持続したり反復したりする。
誰かが与えたわけではないという能動性と、新しい行動であるという獲得性が、循環反応にとって重要な点。
第三段階では、意図性が生まれる。 つかむために物をつかむ から、 音を出すためにつかむ、に変化。
第四段階では、障害物を取り除くために物をつかんで先のおもちゃをとる、ができるようになる。
第五段階では、自分から離れたものを客観的に観察実験。おもちゃを色んな場所にいろんな高さから落とす。
異なる結果を見つけたらそれを繰り返し観察。
第六段階は質的な変化が起きる。象徴機能の発達。意味すると意味されるもの、に分化。
その鍵は発明と表象。
発明
身体を動かさずに洞察学習できるようになる。
表象
ごっこ遊びやお絵かきなどの活動につながるもの。
表象の発生には、模倣が重要な役割を果たす。中でも延滞模倣。この行為自体が脱文脈的であり、ここには表象機能が含まれている。さらに行為である模倣が内化されると思考表象に変遷していく。